目次
問題のある社員にお困りではありませんか
協調性を欠く社員
例:所属している部署で協調性を欠いている従業員がいる。ミーティング中に居眠りをしたり、同僚からの忠告にも「うるせえな」と粗暴な言動をするだけで全く耳を貸さない。
欠勤を繰り返す社員
例:体調不良を理由に欠勤を繰り返す社員がいる。所属している部署の業務に支障が出始めており、同部署の社員からも「安心して仕事を任せられない」という声が上がっている。
非違行為を繰り返す社員
例:会社の備品を横流しして金銭を得ている写真がいる。出張と称して会社には出てこなかったが、実際には出張に出ていなかった。
セクハラ、パワハラをする社員
例:男性従業員が、同じ部署で働く女性従業員に対し、性的なニュアンスを含むジョークを繰り返し発言している。女性従業員からも対応に苦慮しているとの相談が入っている。
例:従業員が、部下に対して、皆が見ている前で必要以上に激しい叱責をしている。
ローパフォーマンス社員
例:即戦力になることを期待して中途採用した社員だったが、思うような成果を発揮してくれない。それだけでなく、基本的といえる知識経験が欠落しており、いくら指導しても同じ誤りを繰り返している。
問題社員への対応を後回しにしても良いことはありません
上記のような問題社員への対応を後回しにしても良いことはありません。影響は様々な方面に及び、最終的には、賠償責任に発展するリスクがあります。
社内・従業員間のトラブル
問題社員への対応が遅れると、職場環境に悪影響が生じます。生産性が落ちる、他の従業員が被害に遭って退職を余儀なくされるといった事態に発展するおそれがあります。
また、セクハラに関しては、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律において、会社(事業主)は、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用関係上必要な措置を講じなければならないと定められています(同報11条1項)。同じように、パワハラに関しては、労働施策総合推進法第30条の2において、同様の義務が定められています。
当該義務に違反したら直ちに会社も賠償責任を負わなければならないという訳ではありません。
しかし、会社は、使用者として、労働者の職場環境に配慮しなければならないという義務(職場環境配慮義務)を負っていますので、セクハラ、パワハラを放置すると、被害に遭った従業員から会社に対し、職場環境配慮義務違反等を理由に、損害賠償請求されてしまうリスクがあります。
顧客・取引先への悪影響
問題社員への対応を先送りにした結果、会社としての生産性の低下や提供するサービスの質の低下が起きると、十分な顧客対応が出来なくなりますから、顧客や取引先が離れていってしまうおそれがあります。
当該従業員と会社間でのトラブル
適切な懲戒のタイミングを失うおそれ
問題社員への対応を後回しにし続けている間、当該社員の態度は一向に改められず、問題がますます深刻化すると、会社としては、直ちに解雇すべき、という流れに傾きがちです。
しかし、解雇は一方的な労働契約の破棄ですから、法律上厳しい要件が定められています。適切なステップを踏んでいかないと、解雇が適法なものとして認められる可能性は低くなります。
そうなると、問題が深刻化しているものの、直ちには解雇できない、ということになり、適切な懲戒のタイミングを失うことになってしまいます。
対応を焦って懲戒解雇してしまうと、不当な解雇として解雇が無効となり、ひいては支給されるべき賃金(バックペイ)の請求をされたり、手続きが杜撰ですと損害賠償請求もされてしまうリスクがあります。
支給されるべき賃金(バックペイ)の請求について
解雇が無効となると、就労できなかったのは使用者の責任である、という理由のもと、従業員は解雇後の賃金請求権を有すると考えられています。そのため、使用者は、解雇されなければ払われたであろう賃金分を支払わねばなりません。
どれ位の期間分、賃金を払わねばならないかという問題はケースバイケースですが、解雇事案における裁判上の和解では、解決金の平均値が9.2か月分であるというデータがあります(未払いの残業代請求を合わせて行っている事案も含みます。
透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会(平成29年4月4日)参考資料2「3.労働審判や民事訴訟上の和解等における解決金について⑥」より)。
解雇されたことに伴う精神的苦痛について慰謝料請求が認められた例
京都地方裁判所平成22年12月15日
上記裁判例は、運転手にアルコールが検出されたとして諭旨解雇処分としたケースですが、関連記録の改変があったにもかかわらず、改変内容について反論を行う機会を与えることなく処分したことについて、手順を逸脱しているものとして、慰謝料50万円を認めています。
問題社員への対応策
問題社員への対応策としては、以下のような事項が考えられます。
事実関係の確定
まずは、事実関係を調査・確定し、問題行為の存在をしっかりと把握しておくことがとても重要です。事実関係があやふやなまま「あの社員は問題だ」として処分することは厳に慎まなければなりません。
例えば、ローパフォーマンスの社員が対象であるならば、どうして仕事が出来ないのか、第三者がみても分かるような資料(ミスの数が分かる資料、数字で表せる成績に関する資料など)を確保することを目指すのが重要です。
協調性を欠く社員や非違行為を繰り返す社員、セクハラ・パワハラをする社員などであれば、それを目撃していた社員の証言や、録音・録画等の記録などの確保が重要です。
指導→振り返りの繰り返し
事実関係が確定できたら、会社として、是正のための注意、指導をし、かつ、そのことについて記録を残しておくことが重要です。問題行動があったとしても、それだけで解雇といった重い対応を一足飛びにすることは、その対応が無効・違法であると評価されるリスクがあります。
また、注意、指導をしたら、改善策を定め、この改善策が実行できているかを定期的に振り返る、そして更なる改善策を定め、一定期間経過後に振り返る。これを繰り返し行うことが大事です。
このサイクルを繰り返すことで社員の行動が改善すれば良いですし、改善できなかったとすれば、「策を定めたが改善されなかった」という事実が積み重ねることができるので、次の処分を検討する事ができます。
処分の検討
指導から振り返りを繰り返して改善を図るのも大事ですが、適切な懲戒処分を検討することも必要です。問題行為には懲戒を持って対応する、という会社の姿勢を明示することは、本人にとってはもちろん、他の従業員にとっても強いメッセージとなります。
懲戒処分については、戒告・訓告・譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇といった処分を設けている会社多いと思いますが、問題行動の程度などに応じた適切な処分を取ることが必要です。
就業規則の見直し
問題社員に対する対応としては直接的ではありませんが、就業規則に懲戒処分に関する規程がないと、そもそも懲戒処分を行うことが出来ません。
また、欠勤を繰り返す社員に対しては、休職を命じ、休職期間満了時に復職できない場合には自然退職とする、といった対応が考えられますが、そもそも休職制度自体、就業規則に定めていないと対応ができません。
会社で定めた就業規則を点検し、問題社員への対応が出来るようなものになっているか、確認をすることも重要です。
対応を弁護士に依頼するメリット
問題社員への対応を弁護士に依頼するメリットは、何と言っても、紛争になった場合の事を見通した対応が期待できるという点です。
事実の確定、指導から改善のサイクル、処分の検討、就業規則の見直し取った、あらゆる場面において、紛争になった場合の見通しを持って対応ができるということは、裏を返せば、紛争が大きくなる前に解決する策をとることができるということになります。
時には裁判手続きで権利関係を明確にしなければならないケースもありますが、多くの場合、早期解決はそれだけで会社、従業員の双方にとってメリットであると思います。
当事務所のサポート
問題社員への対応が必要となった場合、弁護士に対応を依頼することで、事実関係の確定や、指導・改善のサイクル、処分の検討について、スムーズかつ適切な対処をすることが可能になります。
また、紛争に発展することを未然に防ぐための、就業規則の整備等体制づくりについても、弁護士にこれを依頼することで、会社の実態に合わせた体制づくりが可能になります。
当事務所では、これまでの経験に基づき、依頼者の要望、実態にあわせたサポート対応が可能です。是非ご相談下さい。